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久しぶりの修理屋です。
三題噺で書きました。
お題が「バタフライナイフ、花火、よろしいならば(ここは自由)だ。」だったのでちょっとカオスってるところがあります。

これから二、三日くらいはたぶん余裕が出来るのでちょっとずつ小説のほう進めていきたいと思います。望と吹雪が付き合うまでのお話とか、沙羅のライバルの話とか。
と、言う訳で追記からどうぞ。
あ、あと新キャラ出ます。ちょっとこのころはまだアレだったんで説明ないので驚くかもしれません。すみません。



修理屋憂鬱女お花見


 じりじりと照りつける太陽。去年よりも近づいたのではないだろうかと思う程である。
 修理屋は依頼されたものを直すために、重たい工具を持って依頼人の家に向かっている事だった。なんでも大きすぎて修理屋の家まで持ってこれない物だとか。
「あっついなあもう!!」
 あまりの暑さに修理屋の足取りも若干苛立ってるように見える。
 修理屋の飼い猫であるしらたまは家で留守番をしているのだ。涼しい影の下でのんびり昼寝をしながら。
「いいなあ猫はさあ……」
 そんなことをぼやきながら修理屋は歩いて行った。


「ごめんなさいねえ、急にアイス用冷蔵庫が壊れちゃって」
 そう、駄菓子を売っているおばさんが困ったように笑う。
 修理屋は《アイス》を冷やす冷蔵庫に顔を突っ込んで工具を使い、直していく。
「いえ、大丈夫ですよ」
 そうは言うものの電源の入っていない冷蔵庫はただの箱でしかなく、暑い事に変わりはない。
 汗を垂らしながら配線を直して、切れているところには新しい配線を繋いでという作業を繰り返す。
「そういえば、アイスとかはどうしたんですか?溶けちゃったり……」
「もうどうしようもなくて近所に配っちゃったの。ほら、今日はこの暑さでしょう?いくつか余ったりしたんだけど、それは家の冷蔵庫にしまえたから」
「あぁー、それはご愁傷様です」
 アイスくいてえよちくしょーなんて本心で思いながらも修理屋は着々と冷蔵庫を直していくのであった。

 まだ日が頂点に上る前に、修理は終わった。スイッチを入れて動くことを確認すると、修理屋は駄菓子屋のおばさんを呼んだ。
「なおりましたよー」
「あぁ、ありがとう。よかったわ、これでまたアイスを売り出せる」
 おばさんは嬉しそうに冷蔵庫を撫でる。
 修理屋も「よかったですね」と言って工具をしまい始めた。
「お代はいくらかしら」
「えーと」
 修理屋は目にも止まらぬ速さで電卓を叩いて、修理費を打ち出した。
「こんなもんですかね」
「はいはい、わかりました。そうだ、良かったらお昼食べて言ってちょうだい。親戚からね、良いお素麺を頂いたのよ」
「あ、ありがとうございます!」
 修理屋は昼食にお呼ばれして、そこらへんで買う安いものよりものど越しのいい素麺をごちそうになった。
「これすごく美味しいですね。つるつるしてて」
「喜んでもらえて何よりだわ。あ、そうそう、今度お祭りがあるのは知ってる?」
 そう話を振られて、修理屋は素麺を飲み込んだ。
「え?いつですか?」
「二週間後にあるの。その時に私もお店を出すから、良かったら来て頂戴。花火もあるのよ」
 駄菓子屋のおばさんは、棚から一枚の紙を取り出した。そこには、浴衣を着て笑っている子供や、屋台、金魚と言った風に絵が描かれていた。

 帰り道、修理屋はそのちらしを見つめて思い出した。
「二週間後って憂鬱女が来る日じゃん」
 そう、二週間後に憂鬱女がやってきて、新しく雑貨を買っていく日なのだ。そうなると出かけるのは難しいかもしれない。
 と、いうことはおばさんのお誘いは断るしかないのだ。
 そう思ったが、すぐに別の案を思いついた。


「こんにちは」
 修理屋は暇つぶしに拾ってきたものを直していると、外から声をかけられた。声の主は解っている。
 修理屋は立ち上がって、玄関の引き戸を開ける。
 そこには、青色のワンピースを着て、長い黒髪を一つに括っている、おそらく修理屋と同い年であろう少女がいた。
「久しぶり、憂鬱女。暑かったでしょ。入りなよ」
「ありがとう修理屋」
 憂鬱女と呼ばれた少女は修理屋に勧められ、中に入って行った。
 修理屋は白い冷蔵庫から麦茶を取り出し、グラスに注いで冷凍庫から氷を出して三つほど入れた。
「遠いところお疲れ様。泊まっていくでしょ?」
 麦茶を盆に乗せて、居間に運びながら言う。
「ええ、麦茶ありがとう」
 憂鬱女はよほど暑かったか、ハンカチタオルで汗を押さえながら冷たい麦茶を飲み込んだ。
「今年は暑いでしょ。そっちは涼しそうで良いよね」
「そうでもないわ。こっちは、湿気が多くて商品の手入れも大変なの。除湿機がもう一台欲しいくらいよ」
「ん、じゃあまた探して直しとくわ」
「ありがとう」
 修理屋は入れたばかりの麦茶をすぐに飲みほし、立ち上がって修理屋の作業場に消えた。
 数分経ってから戻ってきた。何か沢山抱えている。
「これが直したやつね」
 そういって、小物を憂鬱女の隣に並べていく。
 並べ終わると、次は大きなものを持ってくると言ってまた作業場に消えて行った。
 修理屋は手袋をはめて、一つ一つ汚さないように見ていく。
「これ良いわね……とっておこう。あとこれも」
 手際よく必要なものを取っていく。
「あとはこういうでっかい家具なんだけど」
 修理屋が最初に持ってきたのはランプだった。
「それいいわね。ちゃんと点く?」
「当たり前でしょ。あと、この棚とか。あ、それからなんかいい本落ちてたから拾った。ページは全部残ってるし多少の汚れも落として破れそうなページは補修しておいたから」
 タンスと一緒に持ってきた本を差し出した。
 憂鬱女は丁寧に本をめくって品定めをする。
「これも欲しいわ。それから、この花瓶やお皿も」
「了解。精算するから待ってて」
 修理屋はいつも常備している電卓を取り出し打ち始める。
 相変わらず見てて思わず凝視してしまうような速さだ。
「大体こんなもん?」
 精算をし終えた修理屋は憂鬱女に電卓を見せた。
「あー……もうちょっと安くならない?」
「これ以上?これでも結構加減したんだけど……」
「じゃあなんか一つ買うのやめるわ」
「わかったわかった!ちょっとだけだからね」
 修理屋は渋々といった様子で値引きをして、憂鬱女に再び見せると憂鬱女は満足そうな笑みを浮かべて「ありがとう」と言った。

「夏祭り?」
 憂鬱女が買ったものを壊れないように包装しながら聞き返した。
「そう、夏祭り。花火大会ともいう」
 修理屋も憂鬱女の手伝いをしながら答えた。
「花火……?花なの?」
「あれ?花火知らない?花火ってあれだよ。爆弾みたいなのに火をつけて空に打ち上げて爆発させるの」
「なんかの兵器?」
「ちがうよ」
修理屋は真顔で兵器だと言った憂鬱女が可笑しくて笑い転げ始めた。
「なによ、知らないんだから仕方ないでしょ」
 憂鬱女が少し怒ったような声で言う。
「ごめんごめん。そういえばさ、憂鬱女は春に花見とかしてないよね」
「そうね、私の住んでるところに桜なんてものは咲いてないもの」
「よろしい!!」
 がたっと修理屋がいきなり立ち上がって、腕を大きく横に振り言った。
「ならば、花見だ!!」
 その場がしばらく重たい空気で包まれたのは言うまでもない。
 憂鬱女は手を止めて修理屋を見ている。修理屋も反応を待っているのか憂鬱女を見ている。
 その部屋の隅でしらたまはつまらなそうに眼を細めて大きな欠伸をした。
「急に何言いだすのかとおもったわ」
 長い長い沈黙を破って憂鬱女が呆れたように言う。
 修理屋もさすがに恥ずかしく思ったのか顔を真っ赤にして言った。
「言ってみたかっただけ」
「そう。で、何するの?」
「え?」
「だから、お花見するんでしょう?どうやるの?」
「あぁ、うん。その夏祭りなんだけどさ」
 二人はお花見について話し込み始めた。


 すでに外は暗く、修理屋と憂鬱女は祭りがおこなわれている場所へと向かっていた。
 少し遠くが明るく、人の声が聞こえる。おそらくあそこだろう。
「ほら早く。もう始まってるよ」
 修理屋は、はしゃぎながらゆっくりと歩いてくる憂鬱女を待った。
「ちょっと待ってよ。私、浴衣なんて初めて着たんだから。それにこの草履もちょっと歩きづらくて……」
 修理屋に勧められ、憂鬱女は青い浴衣を着ていた。
「まあまあ、お祭りは雰囲気が大事なんだから」
 そう言って笑う修理屋に黄色い浴衣は良く似合っていた。
 憂鬱女がやっと修理屋に追いついて、修理屋は憂鬱女に合わせてまた歩き出した。

 祭りには屋台がたくさん出ていて、人でにぎわっていた。
「これが夏祭り?」
「そう、これが夏祭り」
「冬はしないの?」
「うーん、冬はした事ないねえ。雪も降らないしさ、ただ寒いだけだし」
「そうなの。ねえ、あれは何?」
 憂鬱女は一つの屋台を差した。
「あれは、金魚すくい。薄い紙で金魚をすくう遊び。紙が破けたらおしまい」
 説明をしてみるものの、憂鬱女はあんまりしっくりきてないようだ。
「やってみるから見てなよ」
 修理屋は金魚すくいの屋台に近寄って、お金を支払って紙をもらった。
 紙は直径十センチくらいの竹の輪にしっかりと張ってあって、取っ手がついている。
「これをね、こう」
 修理屋が、大きな水槽で泳ぐ金魚の群れにそれを入れると、右手軽くをひねって左手にある水の入ったお椀に金魚をいれた。
「おぉ」
 憂鬱女にしては珍しく、驚きの声を上げた。
「結構面白いよ。憂鬱女もやってみる?」
「私はいいわ。難しそう」
「まあまあやってみなよ。はい」
 修理屋は道具を憂鬱女に渡す。
 憂鬱女はあんまり気が進まないと言った様子で受け取り、紙を水に浸けて、金魚をのせた。
 しかし、濡れてもろくなった紙は破けて金魚は落ちてしまった。
「やっぱり難しいじゃない」
「あはは、ごめんごめん。まあ一匹取れたからいいでしょ」
 憂鬱女は少し不機嫌であったが、修理屋がとった金魚をみて何も言わないことにした。
 とれた金魚を水の入った袋に入れてもらって、二人は屋台を見て回った。
「たこ焼きって美味しいのね。初めて食べた」
「焼きそばとかも美味しいよ」
 たこ焼きを楽しんでいる憂鬱女の隣で、修理屋が焼きそばを頬張っている。
 二人は近くにあった長椅子に座って、少し早目の夕食を食べている。
「あの林檎はなに?」
 憂鬱女が指した方向をみると、屋台に真っ赤な林檎が並んでいる。
「あれは林檎飴。林檎に飴をかけて固めたやつ」
「美味しいの?」
「そうでもない」
「そう」
 憂鬱女は林檎飴に興味を失ったようだ。
 二人は自分の食べている物を交換しながら最近の生活や、変わったことを話して祭りを楽しんだ。

 夕食も食べ終わり、食後の飲み物を飲んでいた。飲み物はガラスでできていて、しゅわしゅわと甘い炭酸が入っている。その甘い炭酸の中に入っているビー玉が時折ころころと転がって光った。
「さて、そろそろ家に戻ろうか」
「え?花火は?」
「ここで見ると混んで暑いから、家から見ようよ。家からでも十分綺麗に見えるから」
「混むのはいやだわ。そうしましょう」
 憂鬱女と修理屋は立ち上がって、家に向かって歩き出した。


 修理屋の家に戻り、二人とも浴衣から楽な寝巻に着替えた。
「貴女の家の縁側は涼しいわね」
 憂鬱女は縁側に座り、うちわで仰いだりして涼しい風を楽しんでいた。
「そうですとも。夜はそこに座って夜空を眺めるのが楽しみでね」
 修理屋が自慢するかのように言う。
そして、憂鬱女の隣に座った。
「何を持ってきたの?」
「ん?せっかくのお花見だしさ、呑んじゃおうよ」
 そう言って見せたのは、お酒だった。
「あら、良いわね。何のお酒?」
「それが覚えてないんだよね。アルコールはそんなに高くないらしい」
「そう。でも美味しければそれでいいわ」
「あ、今するめ炙ってるから」
 憂鬱女は言われて香ばしいにおいが漂ってきていることに気づいた。
「準備が良いのね」
「あったりまえよ。そろそろいいかな」
 修理屋はもう一度立ち上がり、台所へ向かう。帰ってくると今度は程よく焼けたするめが二、三枚あった。
「これ、まんま一匹じゃない。大きすぎるわ」
「わかってるよ。だから切るの」
 そういうと、修理屋は懐からナイフを取り出した。
「それ、見た事ないナイフね。拾ったの?」
「うん。バタフライナイフっていって折りたためる便利なナイフ」
 説明しながら修理屋はするめを裂いた。
 その時、空から爆発音が聞こえた。
 二人が空を見上げると、真っ黒な夜空に赤色の花が咲いた。
「あれが?あれが花火?」
 憂鬱女は初めて見る花火に少し興奮しているようだ。
「そう、あれが花火」
 修理屋は花火に夢中になって空を見上げる憂鬱女をみて微笑ましく思った。
「綺麗ね」
「うん、綺麗だね」
「そうだ」
 憂鬱女は急いで自分の旅行鞄を持って来て、中からカメラを取り出した。縁側に座って、カメラのレンズを空に向けて、何度かカシャッと音を立てた。
「こういう時に便利だね。その機械」
「カメラね」
 修理屋に訂正をいれつつ、夜空を取り続ける。
「あ、すごい、緑もあるのね。あ、青も。ホントに綺麗」
「喜んでもらえて何よりだよ」
 憂鬱女は何枚か、撮るとカメラを下して縁側にすわった。
「とりあえず一杯」
 修理屋は二つのグラスに酒を注いだ。
「普段呑まないから、呑むのは本当に久しぶりだわ」
 憂鬱女は酒の入ったグラスを一つ手に取った。
「私もだよ。おいしそう。じゃ、夏のお花見に乾杯!」
「乾杯」
 二人はグラスを軽くぶつけて、酒とあぶったするめを楽しんだ。
 二人が見ていない隙に、しらたまはするめを一つ盗んで部屋の隅で食べている。


 翌日、憂鬱女と修理屋は駅にいた。しらたまも一緒だ。
「昨日はありがとう。楽しかったわ」
 憂鬱女はいつもの調子でお礼を言う。
「いやいや、こっちこそ」
 修理屋も、いつもの笑顔で返す。
「良い物も買えたし、写真も撮れたし。いいお土産になるわ」
 憂鬱女は自分の旅行鞄に目を移す。何故か嬉しそうに見えた。
「お土産って誰に?」
「私の街の駅長さん」
「あぁ、あの人か」
 そんな話をしているうちに、汽車が到着した。
「それじゃあね」
「うん、またね」
 憂鬱女は一度、乗り口で手を振って、中に入って行った。
 それから席に座り、発車の合図の笛が聞こえて、窓から修理屋に向かってもう一度手を振った。
 修理屋も、憂鬱女に手を振替し、汽車が見えなくなるまで見送ったのだった。








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【2013/01/25 00:20】 | 修理屋シリーズ
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